プロフェッショナル映像制作技術

トーヨーキッチンのプロモーションビデオ「V-LAND」を例に、プロの撮影・編集技術を解説いたします。

 

下記完成作品を再生して、どのような撮影や編集テクニックが使われているのかご覧になってください。
ポイントは
@オープニングは、3D空間上でクロマキー合成しています。カメラワークを使うことで動きのある画づくりを容易にしています。
Aエンディングのディスプレイですが、これも3D空間でスチル写真を使って疑似3D映像に仕上げています。

V-LAND image

 

1. オープニングの映像はクロマキー合成で作られています。
ポイントはキーイングソフトとブルーキャンセルです。

画面@After Effects上での合成です。背景となる床はグレーの単色、V-LAND(シンク)は写真、ダイニングテーブルとソファはPhotoshopで描いた平面画像です。V-LANDなど画像のサイズは5,000x3,000ピクセルという大きなもので、アップにも耐えられる解像度です。

クロマキー処理は、After Effectsの標準プラグイン「Keylight」を使っています。PremiereやFCPの標準キーヤーでは高度な合成は難しいようです。
撮影上のポイントは、人物をなるべく大きく寄り気味のサイズで撮ることです。カメラワークで寄りこんでも画像が荒れることがありません。
また、テーブルに座っている人物の撮影はブルー布をテーブルに被せて同じ条件にしています。

ブルーバックで俯瞰撮影された人物をリアルなサイズになるよう縮小して配置しています。セットバレなどはペンツールのマスキングで処理を施します。

fukanB クロマキーマスク

 

ブルー(グリーン)被りを抜く
この画像では目立ちませんが、エッジや人物に被るように背景のブルー(グリーン)が乗ってしまうことがあります。
この対処法を知っている方はプロでも少数ですが、ブルー(グリーン)キャンセルという方法で簡単に処理できます。

画像BC Keylightでのクロマキー処理の後(下位)に「色相/彩度」というカラーコレクションを適用します。
チャンネル制御をマットと同色の「青」を選択して、「彩度」を-100まで落とします。画像C

これで人物や衣服などにまったく影響しないままブルー(グリーン)の彩度を抜いてグレーにすることができます。
同時に、フォアグラウンド(人物など)のブルー被りなどもすっきり抜くことができます。

画像BCキーイングを行わずにブルーキャンセルのみ適用した画像です。
いかに人物の色バランスに影響なくブルーマットを色抜きできるかの実証です。
実際の作業では必ずキーイングを適用した下位エフェクトに適用してください。

ブルーキャンセルレイアウト ブルーキャンセル

 

リアルな合成処理
最後にキーイングした人物やシンクなどの写真素材に「ドロップシャドウ」を適用します。画像Dはシャドウなし、画像Eはシャドウ付きです
この処理によってリアリティが増し、実写のような仕上がりになっています。
また、3Dコンポジット空間でカメラワークによるトラックバックの効果がさらに実写風の効果をもたらしています。

合成影なし 合成影付き

この映像はHDVで撮影されたもので、Mpegロングゴップゆえにクロマキー処理の書き出しに駒抜け(駒飛び)の症状が出てしまいました。
解決策として、クロマキー撮影分をTGA連番画像(1920x1080)非圧縮に書き出し、このファイルを使って合成作業しています。
基本的に合成後の書き出しは、画質劣化を防ぐべくタルガ(TGA)の連番です。

 

2. エンディングの3Dコンポジット技術について

まずは、下のエンディングカットをよくご覧ください。実写のスタジオセットでの撮影のように見えますが、すべての素材がスチル写真や平面画像でコンポジットされた疑似3D映像です。

ディスプレイ

 

下の2枚の画像FGがこの立体空間の素材です。After Effectsの3D空間に写真やフォトショップで描かれた平面画像が配置されています。
この空間をリアルな3Dに見せているのが、カメラワークとライティング、ガラス面への写りこみなどです。
3D空間 3D空間02

 

下の画像HIは、完成形を少し引き気味にして天井をはずしたものです。
配置がわかりやすい白バックHと黒バック天井ありIで見せています。
白バック空間 天井あり空間

 

次の画像JKライティングと窓ガラスの写りこみをON/OFF下した比較です。

左の画像Jはガラス面の写り無し、ライティングも一部OFFです。右の画像Kは左ガラス面の写りこみ有、ライティング有です
ライティングはシンクが置かれていた床面、ダイニングテーブル、背後の壁面のソットサス(オブジェ)などで確認できます。

窓のガラス面への写りこみは動画で見ると明快な違いがお分かりいただけるかと思います。ダイニングテーブルをガラス面と同じ位置の配置して透明度を調節して写りの効果としています。

いかにライティングや写りこみ処理がリアリティに通じるかお分かりいただけるかと思います。

ライトオフ ライトあり

 

3. 画像のタッチアップ修正

エアフローの説明で床の設置状況が見えますが、レベル調整用のボルトが床のリノリュームを陥没させています。
画像のタッチアップを計算して修正部分に足がダブらないよう撮影し、後処理でパンニングしています。HD撮影で、実際の使用はSDサイズのため画像が荒れるまでには至りません。

エアフロー未修正 エアフロー修正済み

 

4. 引き出しの動きを伴う合成です。

すべてが静止画で、引き出しの動きとカメラワーク、画像全体の回転動作など複合的な処理で3D合成しています。
まずは、出来上がりをご覧ください。

引き出し01

 

以下の画像NOPの3枚の静止画が素材です。引き出しはPhotoshopでマスク抜きして使用しています。

V-LAND
hikidashi L
hikidashi S

 

この合成も3D空間で行っています。
理由は引き出しの動き、V-LAND全体の回転する動き、全体のトラックアップという3つの動きをシンプルに分散させるためです
引き出しはフィックスしたV-LANDに対してマスク処理で動きのみ与えています。

V-LANDの回転は画像センターをオフセットして右サイドに寄せています。この動きにシンクロさせるために引き出しは画像Qのように親子関係を指定してリンクさせています
この動作全体をカメラワークを使って控え目ですがトラックアップしています。

AE操作パネル 引き出し俯瞰

以上がこの映像作品で使われている合成テクニックです。

撮影に当たってはすべてのカットを3DCGで描画し、カメラアングルや移動ショットをシミュレーションしています。
このCGイメージをもとに完璧なコンテを作成、すべてのカットが後処理で合成しやすいよう計算された後に撮影されています。

撮影に時間をかけず、編集をしやすく、無駄を省きつつ最良の結果を求めるのがプロの仕事です。


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